文系お姉さんの日記

元接客業、現在接客兼販売業の20代文系お姉さんの日記。とはいえその日の出来事はほぼ書きません。

お客さんの話

来店したお客様に「いらっしゃいませー」「おはようございます〜」と挨拶しながら品出ししてたんだけど。

一人で買い物に来てた60代くらいの女性のお客さんに「あなた良い挨拶ねー」と声をかけられた。なんかこう、ちょっと驚いた感じに。よく言われますーありがとうございますーって返したら、「私久々に外に出てきたの。挨拶されるのなんかいつぶりかなぁ」って。そうなんですか?と聞くと、いや色々あってね、とこんな話をしてくれた。

 

 

そのお客さんは旦那さんと二人で暮らしてて(多分子どもいない)、あんまり裕福じゃなかったけど仲良く過ごしてた。でも旦那さんが病気になって、長いこと介護してたけど亡くなってしまった。

旦那さんは生命保険にこっそり加入していて、ちょっとびっくりする額の保険金がお客さんの元に入った。お客さんは寝耳に水。途方に暮れてしまった。

しかし多額の現金を持ったことを知るや、周囲の人間がガラリと態度を変えた。今まで音信不通だった親戚や自称身内が昼夜問わず連日電話をかけてくる。もちろん狙いは金。お客さんはすっかり弱ってしまった。

けれども「このまま負けてたまるか」と一念発起し、かかってきた電話全部に「現在精神に異常をきたしているのでまともな返事はできません」と応対、以降一切他人との関わりを断絶して籠城したという。買い物はネットとか宅配だったらしい。

で、全く誰とも会わなくなって一年ぐらいして友達から「あんた最近見ないけど何してんの」と連絡がきた。こいつも金目当てかと疑って「うつ病になっちゃって外に出れないのよ」と返すと「うつ病になるようなタマじゃないでしょう、みんな心配してるから顔見せなさいよ」とそれだけ言って終わった。もう良いか、とそのとき初めて安堵して、ようやく家から出たそうな。

 

「あなたはまだ若いだろうけど、だからこそお金を貯めなさい。お金は万能じゃないけど、必ず助けてくれる」

「お金持つと親戚が増える。でもその人達は信用しちゃダメ。絶対に信じられる友達を大切にしなさい」

「確実に愛されたいなら動物を飼いなさい。愛情を注げば同じだけ返してくれるから。人間じゃそうはいかない」

お客さんはそう締めくくり、「聞いてくれてありがとう」と会計に向かった。

「もうミカンが出てるのね」

と去り際に呟いたのが印象的だった。

 

 

なんというか、衝撃を受けた。ドラマみたいな話だった。嘘には思えなかった。

そのお客さんにはそれっきり会ってないけど、その話と最後の3つの教訓は今でも鮮明に思い出せる。きっとこの先生きていくなかで、いつか必ず役に立つと思う。