今は攻殻機動隊の少佐みたいな髪型
私がまだ20歳そこそこで、就職したての頃だった。
当時前髪ぱっつんで前下がりボブだった私は研修後「あなたの髪型じゃ接客向いてない」と会社から名指しで叱られた。特段おかしな髪型ではなかったし、社内規則にも反していないのにだ。
多分髪色が真っ黒(地毛)で目の形が特徴的だったから威圧感があったんだと思う。
でも何だかイラッときたので言われたその日の帰り道、真っ直ぐ美容室に行ってばっさり切ってやった。ランチパックのCMで歌って踊っていたときの剛力彩芽ばりに。
会社からは絶賛されたけど全然好きな髪型じゃなかったし(剛力彩芽をdisってるわけではない)、会社の言いなりになった気がして余計イラッときたのでそれ以降髪を切らなかった。
その間、9カ月。
私はひと月に2センチ前髪が伸びる剛毛マンである。後ろも1.5センチは安定して伸びる。9カ月も放置していた結果、カジュアルな貞子みたいな髪型になってしまった。
カジュアル貞子
仕事中は帽子の中に髪を全て収めるので問題なかったが、休憩室で食事をするときは帽子を脱いでしまうのでカジュアル貞子である。
「顔が見えねぇ」
「まじで怖い」
と上司や同期、パートさんに散々言われたのでいい加減切りに行くことにした。
9カ月ぶりに美容室に行くと、たまたま以前と同じ美容師さんが担当だった。スタイルの良い美人だけど愛想皆無で接客態度がちょっとぶっきらぼうな、正直怖い人だった。
まあ何かしら言われるだろうなと椅子に座り、ケープをかけてもらった瞬間に美容師さんが口火を切った。
「まさか、こないだから一回も切ってないとか言わないですよねぇ?」
ぶっきらぼうどころじゃない、明らかにキレていた。
たしかに数カ月前に切ったきりの、形を整えず伸びるように伸ばした汚ねぇセミロングもどきで店に来たらキレるだろう。美容師って綺麗な髪型を維持できるように施術するのが仕事だから。
「毛先全っ然揃ってないし」
「伸ばしたいならマメに通わないとダメなんですよね」
「忙しい? 毛先切りにくることもできないくらい?」
めっちゃくちゃ怒られた。注意とか指摘じゃない、激怒。顔全面に嫌悪感を出していた。なんだこのものぐさブス、みたいな目つきをしていた。
それでも施術は丁寧で、カジュアルな貞子から小綺麗な貞子くらいにはしてもらった。ちなみに切ってもらってる最中私は謝りっぱなしで、どんな風にしてほしいかは一切言えなかった。
「これだったら伸ばしても綺麗に伸びますから。今度はちゃんと月イチで毛先揃えに来てくださいね」
最後まで不機嫌だった美容師さんに、私は無言で頷くばかりだった。
結局あれからその美容室には行かなかった。怒られたのが怖かったから、なのにめんどくさくてしばらく放置し、再び怒られるのが嫌だからというチキンハート豆腐メンタル。
美容室に通うのってものぐさには無理だよな。美容室に定期的に通えてる時点でもう美意識高いと思う。
最近は50代〜80代の女性がメイン客層の美容室ばっかり行ってる。毎回切ってくれる人が違うから通うのを少々サボっても色々言われない。美容師もおばちゃんが多いからトゲがないし。
とはいえ、ついにそこでも「髪の扱いが雑すぎる」と苦言を呈されたので気をつけることにする。もう怒られたくない。