捕らぬ狸の皮算用とはこのことよ
新年早々に大変悩んでいる。推しのファン旅行に応募するか否かでだ。
ひと月ほど前にファン旅行の計画があることを知り、その時は主に金銭面を心配していた。その時点で仕事を辞めることが決まっていたため、無収入の状態で旅行なんて行けるのか?とその通知を見ながら唸っていた。
そこでそのときは「旅行代金が交通費無しで3万円以下なら問答無用で行く、5万円以上ならパス、その中間なら内容次第」と解答を出していた。言うなれば先延ばしだ。
そして最近、旅行の詳細が出された。
旅行代金はギリギリ4万円台、一番困るやつだった。
まあ内容を見て決めよう、と行程表をチェックして、ここで現在の悩みを抱えることになる。
「ば、バーベキューがあるの!!!?」
宿泊先は海辺のリゾート地、BBQにはもってこいの場所である。ここで推しとそのファン達がキャッキャウフフと食材を焼き談笑しながら親交を深める、こいつぁグレートですよ。
しかしながら私は生まれついての陰の者、BBQなんてコミュ力バーストしている人間の主戦場に乗り込むのはヒトカゲ1匹でニビシティジムに挑戦するようなものだ。
まだ食べるだけならいい、知らない人間と話すことも苦ではない。周りの空気を読みながら食材を焼いて相手の皿に乗っけるのが超絶苦手なのだ。
会社の飲み会もお酌と料理の取り分けが苦手で、新入社員時代は頑張ってみたが他の人に下手くそと笑われたのが心の傷になっている。ちなみに2年目以降は開幕イッキで早々に酔っ払いお酌と取り分けを回避する、という最悪の手を使っていた。
だがこれはファン旅行だ。同じ場所に推しがいる。居合わせた他のファンには最悪嫌われてもいいがこの先顔を合わせるであろう推しに「BBQでベロベロに泥酔して他人に迷惑かけまくってたクソ女」と認識されるのは腹を切るレベルの惨事だ。
というか他のファンにも嫌われたら推しのライブに行けないな、もうダメだ。
あああ私が陽の者だったら、気遣いのできる女だったら。旅行の詳細が出た瞬間にカードを切ったのに。
もちろん旅行は他の企画も魅力的で、推しのミニライブがあったりトークショーが聞けたりもするらしい。限定グッズも入手できるそうなのでできれば行きたい。
推しと一緒にお酒も飲めるっぽいが、さすがにそれは多くを望み過ぎな気もする。カウンター挟んで推しがいるなんて状況で酒の味なんて分かるまい、水飲んでも酩酊状態になるだろう。
考えたらファン旅行とはいえ推しと同じ建物内で1泊2日を過ごし同じ場所で飯を食うのだ。一緒にちょっとしたゲームをしたり会話をしたりするのだ。もしかしたらすっぴん風呂上がりのときに推しと出くわすかもしれない、えっ無理まじ無理ほんと無理。心臓もたない。
そんな感じでまだ応募フォームすら開けずにいる。応募なんだしまだ参加できるって決まっていないんだし何をグズグズしとるのかと叱責されても仕方ないが、こればかりは自分のチキンハートと相談するしかない。
もう少し様子を見て、それまでに定員が埋まれば諦めるし空いていたら再考する方向でいこうと思う。また先延ばしである。