文系お姉さんの日記

元接客業、現在接客兼販売業の20代文系お姉さんの日記。とはいえその日の出来事はほぼ書きません。

そういう人を癒す立場でありたい

中学時代は3年間、同じ男性教師が国語担当だった。

多分2年生のときに「盆土産」という小説を授業で取り上げた。出稼ぎに行っている主人公の父が、主人公が食べたことがないエビフライをお土産に盆に帰ってくる話。確か主人公の家には母親がいなくて(死別?)普段はおばあちゃんと姉との3人暮らしだったはず。

 

小説なのでまず初読の感想をノートにまとめ読み上げる、というのをやることになったが、当時は日に5食食べていたくらい常に空腹で、感想なんてエビフライおいしそうでしたしか思いつかない。内容もさっぱり頭に入ってこなかったので、自分の父が単身赴任していたときのことを思い出してそれを書いた。私も主人公と同じ経験してます、といった感じで。

 

 

私が幼い頃、父は単身赴任していた。今なら新幹線で2時間足らずで行ける場所だと知っているが、当時の私には父の働く街は外国ほど遠い場所だと思っていた。時々帰ってくる父はいつもお土産を買ってきてくれたけど、お土産より父が家にいてくれることの方が嬉しかった。

あるとき母と兄弟とで父の住むアパートを訪ねた。そのときのことはまだ思い出せる。実家とは全く違う、殺風景で色のない部屋。帰って寝るためだけの部屋だった。手紙の書けない私が父に送っていた幼稚園で作った工作だけがテレビ台の下に飾られていた。

それからしばらくして父は単身赴任を終えて帰ってきた。単身赴任中のことは今も話さない。私は父が単身赴任先に戻るたびに寂しいから嫌だと大泣きしていたけど、きっと父も寂しかったのだと思う。父は本当に家族のことを思って、ひとりで働いてくれた。私も家族を大切にしたい。

 

 

こんな内容だったと思う。苦手な音読を終えてノートから顔を上げると、発表を聞いていた同級生たちは静まりかえっていた。やっぱ内容に触れてないもんなぁ、と男性教師の方を盗み見ると、なんと涙ぐんでいた。同級生たちは男性教師が泣いていることに動揺していたらしかった。

すみません、と私は謝ったと思う。なぜかわからないけど。いやいや、と男性教師は涙を手で拭って、別の生徒への発表を促した。

 

 

あのときはなぜ男性教師が泣いたのかわからなかったが、現在なら理解できそうな気がする。

男性教師も妻子持ちで、家庭を守る男としての重圧に耐えていたのだと思う。私の父がひとりで知らない街に働きに出たのも、きっとその重圧のひとつだ。

 

 

私も子どもを持つともっと正確に理解できるのかもしれないけど、男女平等と言えど男性の重圧を完全に知ることはできないだろう。女性の苦悩を男性が理解できないように。

もっと万人に救いのある世の中にならんかなぁ。みんな心のどこかにあると思う、孤独を感じるばかりの色のない部屋。